「ずっと運転し続ける発電所に比べたら、出番を待って眠ったままの爆弾の方が作る方が気が楽さ」
池澤夏樹「アトミック・ボックス」毎日新聞社
一頃騒がれたベクレルやらシーベルトやらも、最近とんと耳にしなくなりました。放射線測定器の極端な品薄騒動、そしてそれに伴う価格暴騰騒動も、いつしか鳴りを潜めました。 しかし、福島第一原発事故で放出&拡散された放射性セシウム(137Cs)の半減期は30年強。わずか4年では、まだまだ放射線を出してます。日常生活空間での放射線測定は、広く長く取り組み続けねばなりません。
幸い、放射線測定器は価格破壊が進みました。先日医療活動委員会で購入した機器はなんと4000円。これなら一家に一台、それどころか一人一台だって強ち夢ではありません。生協組織部にある定価100000円超の高級機とはさすがに差が出てしまいますが、日常使いには安いほうがお気楽でいいです。くっくやしくないもん。
放射線の測定には何を測るべきかという問題がついて回ります。しかし、一市民が福島第一原発事故に関連してという前提ならば、測定すべきはシーベルト〔Sv〕一択。シーベルト〔Sv〕とは、どのくらい放射線を浴びたかの目安となる量です。そもそも市販の家庭用放射線測定器はすべて、測定値をマイクロシーベルト・パー・アワー〔μSv/h〕で表示します。つまり、一市民が自力で知り得るのもシーベルト〔Sv〕のみなのです。
シーベルト〔Sv〕はそのままでは大き過ぎ、測定値に0.000…のようにゼロが沢山ならんでしまいます。そこで、ミリ〔m〕1000分の1や、マイクロ〔μ〕1000000分の1をつけて適当な大きさにします。パー・アワー〔/h〕は毎時(=1時間毎)です。つまり、放射線測定器の測定値は、その場所に一時間居るとどのくらい放射線を浴びるかを示しています。 では、測定値を「日本人は一年に平均2.1ミリシーベルトの自然放射線を浴びています」という言い方と比べるにはどうしたらいいでしょうか。ズバリ、ある地点での測定値〔μSv/h〕を8.766倍すれば、そこに一年間居た場合の被ばく線量〔mSv〕になります。
理屈を少々。そもそもこの言い方は、「日本人は平均2.1ミリシーベルト・パー・イヤー〔mSv/y〕の自然放射線を浴びています」というのと同じことです。マイクロシーベルト〔μSv〕をミリシーベルト〔mSv〕にするには1000で割れば良し。毎時(=パー・アワー〔/h〕)を毎年(=パー・イヤー〔/y〕)にするには8766倍すれば良し。よって、マイクロシーベルト・パー・アワーをミリシーベルト・パー・イヤーにするには8.766倍すれば良しです。ちなみに24x365は8760ですが、四年に一度の閏年を按分して+6してみました。ちょっと通っぽいでしょ。
私は、この分野に関しては完全に「ニワカ」です。事故直後から今日に至るまで地道に放射線測定を続けておられる少なからぬ方々に敬意を表します。拙文が活動の一助となれば幸いです。
「くらしと医療」2015年4月号